11. 失うもの (1998.11.13)

「すぐ、失うものは何でしょう?」
「愛?」
あ〜〜、それは言いっこなしですよぉ。

それは傘でした。
出掛けに雨が降っていると、傘をさしていく。さて帰りに晴れていると、はい、それまでよ。
傘の存在に気づかず、帰ることに集中する。いったい何本の傘を置き去りにしたことか......。だから、決して高い傘は買わない。

傘と言えば、なんと言っても紳士用にかぎる。女性用に比べて大きくてよい。
花柄やピンク色がないからいい。紺や茶のシンプルさが私に合っている。

新宿に紳士傘を安く置いている店を知っている。
どしゃぶりの夕方には、おじさん達にまじって私も傘選びに余念がない。タクシーに乗るよりも安いかどうかが、私の値段の見極めになる。

傘の値段はいつから、こんなに下がったのだろうか?
ビニール傘は、初めは1000円はした。それを「安い、安い」と買った。ある時800円になり、ふと気づくと500円になり、まだ下がる。

商いをする父が「物の値段はどんどん下がる」と言った。私が小学生か中学生の頃の話。当時は、高度成長時代で「大きいことはいいことだ」が大はやり。とうてい私には理解できなかったが、その通りになった。

なぜ、バブルは、「土地の価格は上がり続ける」という神話を作ったのだろう?
「土地価格も変動する」のは、しごく当たり前のことはないか。

高度成長の頃の気仙沼には活気があり、実家(気仙沼の当時の中心地)の土地は、千葉や埼玉より高かった。200カイリ水域という規制ができ、オイルショックが追い打ちをかけると、みるみる間に活気がなくなり、値が下がった。

「東京の土地だって、下がることはある」とうすうす気づいていた。きっと皆さんだって気づいていたはずだ。だから、気づかぬふりをして「融資をした」のは、どういうことかと、疑問に思う。

さて昨今のパソコンの値下がりは、、、それは、もちろん嬉しいけど、ちょいと悲しいぃ〜よね。