129. 東京で事件があると... (1999.9.14)

東京で事件があると、すぐに実家から電話が入る。
新しいところでは、池袋の通り魔殺人事件だ。
「大丈夫すか?」だって。
どうやら、「東京で事件」と聞くと、私のすぐ近くで事件が起きているとでも思うのだろう。
ま、数年前まで池袋に事務所があったから、他人事ではない。

運の悪いことには、目白に住んでいた頃は、「目白通り・レイプ事件」があった。
「目白通り」に面したワンルームマンションの女性の部屋が狙われる。
その犯人がなかなか捕まらずに、時々ワイドショーでやる。そのたびに電話がくる。
「まだ、捕まんないのすか?」って、こっちが聞きたい(その後、犯人は逮捕された)。

「地下鉄サリン事件」の時はこうだった。
当時、私はクライアント先に常駐していた。
事件の当日、私は、いくつかの用事を済ませてからクライアント先に行くことにしていた。ホワイトボードには、前日に「11:00 出」と書いている。

しかし、その日、交通手段の地下鉄が時間通りに来ない。
アナウンスは、「事故が起きて、電車が遅れてる」と言う。
ま、そんなことは、よくある。
仕方ないなぁと思いながら、2〜3カ所の用事を済ませ、クライアント先に到着したのは、予定から1時間遅れの12:00近くになってしまった。

到着するや、皆さんから、「オヤマさん、ご実家に電話して下さい」と言われた。
「何度も電話が来ましたよ」「とても心配してました」と矢継ぎ早に言われる。
こっちは、歩きまわっていて、「事件のこと」は知らない。
「今朝、大変な事件があったんですよ」と説明をきく。

テレビは、事件現場の映像を映している。またまた電話が鳴り、皆が、こちらに目で合図する。電話の向こうで母の声。
赤面しながら、気仙沼弁で受け応えする。
「大丈夫だでば.......生ぎでってば.........心配すんすなって.........ほんで、切っかんね.......仕事中だがらっさ.........あどで電話すっから」

その時は、ただただ赤面した私も、事の詳細を知ると、すっかり青ざめてしまった。
事件から約1時間後、私は、千代田線・丸の内線を利用し、霞ヶ関を通っている。
よりによって、こんな日に地下鉄に乗るなんて..........。

というわけで、実家では、東京のニュースには敏感で、「東京は大雨で電車が動かない」というニュースを見ては電話をよこす。よっぽど暇とも言える。