170. 本格派・気仙沼弁---36 <モー> (2000.8.16)

「モー」というのは、気仙沼地方で言う「おばけ」のこと。
「そんなごどしてっと、モー来るよ」と、おもに子供をしかる時に使う。
「モーに、けでやっから」(モーにくれてやるよ)なんて言われると、泣く子も黙る。

気仙沼には「モーのすみか」と言われている場所がある。
「おしめさんのほら穴」だ。
五十鈴(いすず)神社のことを親しみをこめて、「おしめさん」(お神明(しんめい)さんの意味)と呼ぶ。
ここにモーが住んでいると言われる「くら〜い洞穴」がある。

おしめさんは、うちから歩いて3分くらいのところにあり、父のリハビリ用の散歩コースにしている。
父と甥っこ2人の合計3人を連れて散歩に出た。

ある・ある!「モーの家」
私達が子供の時も、「ゆーごどきがねー子供は、モーが連れでいぐよ」(言うことを聞かないとモーが連れていっちゃうよ)と言われた。
そのセリフは、子供を震え上がらせる。

大人になった私が甥っこ相手にそのセリフを言ってみると、5歳になる甥がブルっとひとつ身震いした。
効果てきめん。

しばし、モーの家である「ほらあな」の前で、「悪いごどしたら、モーにけでやっから」などと、ひとしきり脅しをかける。
「僕、悪いことしない〜」と訴える。
「ホントすか?」
「しない〜〜〜」(半ベソ)
ま、今日はこのくらいにしておくか。

甥っこに説明しながら、一緒に「モーの家」を見つめていたら、本当に何かが出てきそうで、私もちょっと恐くなってしまった。
「モーの家」の前にいると、知らぬ間に子供の頃に返る。

30数年前、祖父の散歩に弟と私が付き添った。
今は、父の散歩に、父の孫が付き添っている。

お盆に、背筋が寒くなるというよりも、どこか微笑ましい「モー伝説」である。

つづく...