19. おはようおじさん (1998.11.27)

子供の頃、近所に「おはようおじさん」が住んでいた。
朝、家の前に椅子を出し、座っている。
そして、学校に向かう子供達と「おはよう」と挨拶をかわすのが、おはようおじさんの日課だ。

「おはよう」が言えないと、呼び止められて「もう一度」となる。
私は、小さい頃は本当に小さく、声も小さく、なさけない子だったから、大きな声で「おはよう」が言えるまで、何度もやった。そして頭をなでられ「よし」となる。

ちゃんと「おはよう」と言っても、時々説教される。
「朝ご飯は食べたか?」とか、「家の手伝いをしているか?」とか。
悪ガキが説教されている間に、そっと通りすぎようとすると、悪ガキと一緒にもっと説教される。
「こそこそするようではいけない」のだ。

中学生になると「おはようございますと言いなさい」と少し大人の注意になる。
「目上の人には、敬語を使う」ことを教わる。

おかげで子供達が「おはよう」と言える町になった。
昭和40年代の話。呑気で平和な時代。

初めてサンフランシスコに行った時に、朝、ホテルで、見知らぬ人に「Morning」とか「Hi」などと言われ、とまどった。いつしか、朝の挨拶をしない生活になっていることに気づく。
とっさには反応出来ずに、顔がこわばる。
これでは、日本人は愛想がないと言われてもしょうがない。もちろん、次からは「ハ〜イ♪」と言って、自分から挨拶した。なんだか、それだけでハッピ〜な気分になる。

そのままを東京でやったら、「変な人」扱いされ、最近、少々自粛している。