212. 恐怖のかかと落とし (2001.8.27)

ろっ骨骨折騒ぎで、楽しい気仙沼の思い出を書くのが遅くなってしまった。

この盆休みも充実した時を過ごしていた。
気仙沼に帰るや、弟の嫁が体調をくずし急に入院したので、数日間、甥っこ二人を預かって、ご飯を食べさせたり、風呂に入れたりと、つかの間のお母さんをさせてもらった。

たま〜に帰る東京のおばちゃんは、6歳と4歳という悪ガキ2人を相手に孤軍奮闘。
「子育てってのは、こんなに大変なのか」と思い知る。
4歳児も今年の春から幼稚園・年少組に入ったので、昨年よりは少し聞き分けるようにはなっている(昨年だったら、どんなに大変だったかと後になって恐怖に怯えた)。

お兄ちゃんは、一人でトイレが完璧に出来るが、次男はいきなり「おしっこ」とくる。
間に合わないと、やってしまうと聞いていたから、とにかく走る。
「トモちゃん、走って〜〜 我慢よ! 我慢・我慢、まだよ〜〜〜」と後ろを追いかける。
トイレまでたどり着けば、あとは一人で出来る。あ〜間に合ったか。

そして食事をしていても、いきなり「うんち」
「え〜〜〜!」
「トモちゃん、走って〜〜 我慢!」を繰り返す。
ズボンとパンツを脱がせて、大人用の便器に落ちないように座らせて、時を待つ。
最初は私に恥ずかしがっているが、そのうちにプ〜。
あ〜、やれやれ。
で、戻って食事を続けるんだよね。世のお母さんならば、当たり前の事なんだろうけれど、私は、
「あ〜 続けて食事なんか出来ないわ」と思ったのも一瞬のことで、次から次にやることはあるから、やっぱり箸を取り、食事を続けるわけだ。

長男のよっちゃんは、ぜんそく気味。
アレルギー体質で、何かに反応してはウルウルと涙目になる。
ダニ・ほこりに弱いというから、部屋の隅々まで掃除機をかけ、ぞうきん掛けをする。そのそばから散らかす悪ガキ2人。
靴下の底を見れば、どこをどう歩けば、これほど汚くなるのかと思うほど、真っ黒。
まだまだ掃除が足らんと、さらに磨きをかけるオバちゃん。

きっちり話したわけでもないのに甥っこ2人は、お母さんが入院した事実を彼らなりに理解していた。
いつもは「お母さん、お母さん」と母親にまとわりつく甘えん坊の次男も、私達の前で「お母さん」という言葉をひとことも発しない。子供ながらに、まわりの大人に気を遣っているのがわかる。いじらしい(涙)。

病院に連れて行くと、2人はお母さんに「ピタッ」とくっついて離れない。
こんなにくっついているんだから、帰りは泣くな、と心配したが、「帰るよ」と言うと、聞き分けよく、すっと立ち上がった。玄関まで我々を見送りに来た母親の姿が見えなくなるまで、大きな声で「バイバイ! バイバ〜〜イ」と手を振り続ける。ああ、その声に目頭が熱くなるオバちゃんなのであ〜る。

夜は、3人のふとんを並べて「川の字」で就寝。
初日、私は端に寝て、二人を並べた。寝相の悪さは聞いていたが、これほどひどいとは驚きだ。ごろごろところがって、お互いに蹴飛ばしては寝ぼけたまま喧嘩をしている。起きてるんだか寝てるんだか、よくわからない。不慣れなおばちゃんは2人を引き離し、風邪をひかすまいとタオルケットをかけるのに、余念がない。
寝不足。

昼寝をさせれば、おばちゃんだけが寝て、2人は起きていたらしい(いかん)。

2日目の夜は、2人を両隣に置いて、私は真ん中に寝た。
2人がぶつかって喧嘩する心配はあるまい。しかし、これは最も危険な配置だった。
3人がグッタリと寝静まった丑三つ時、私の脚は両サイドからおもいっきり蹴られている。

「なに!?」ビクリと起きあがる。う〜む、なぜに私の脚を蹴る?
二人を私から引き離し、再び、眠る。(すぐ眠れるのは私の特技)。

すると、いきなり、私の腹にドス〜ンと何かが落ちた。
「うぐっ」
みると、長男のかかとが私の腹を直撃。
さすがに、この時ばかりはすぐに眠れない。暗闇の中で観察すると、長男は、脚を90度の角度に上げ、その後、ドス〜ンとかかとから落とす。ドス〜ン、ドス〜ン。
(あとで聞くと、これが恐怖のかかと落としで、このくらいの子は、皆これをやるんだって)。
これはたまらん。

そしてもう一人の悪ガキもまた、私の方に寄ってくる。3つのふとんを敷いているのに、中央の私のふとんに3人が片寄せあって寝ている格好だ。私は自分用のタオルケットを持って、端の隙間に移動。また眠る。
気が付くと、2人も私に向かって移動し、小さな足は標的をみつけると、おもいっきり蹴飛ばす。
う〜む、恐るべし奇襲攻撃。

再び、別の隙間に移動。
2時間後には、敵陣はこちらの位置を的確にとらえ攻撃を開始している。
すごすぎる。

真夜中の熱き戦いが終わり朝を迎えると、いつの間に二人は自分の枕にきちんと寝ていた。
そして、私だけが、足下にころがるように寝ていたんだね。
私より早起きの2人が口をそろえて言った。
「リコねえちゃん(私のこと・気をつかっておばちゃんとは呼ばない)、なんで、そんなところで寝ているのぉ〜?」だって。
チャンチャン♪