25. デマのパワー (1998.12.7)

昨日、「特命リサーチ200X!」というテレビ番組で「恐怖デマ」を見た。
1973年だったかな、某信用金庫がつぶれるというデマが発生し、広がるメカニズムを解析した。

他人事ではない。
白状します。私は中学3年生の時にデマを流しました。深く反省。
20年以上も前の話で、すっかり忘れてしまった同級生も多いと思うが、こんなことがあった。

中学3年生も冬になると、受験を間近にひかえて神経質になる。
しかし、私と親友は、全然、受験勉強する気になれず、毎日ダラダラ過ごしていた。
他の友達はちっとも遊んでくれないし、勉強する気にもなれない。
「つまんないなぁ」「何かおもしろいことないかなぁ」
私が「転校生でも来ないかなぁ〜」と軽い気持ちで言った。
中学3年生の1月だったかなぁ。そんな時期に転校生など来るはずもなかった。来るはずないから、また「来ないかなぁ〜」となる。
「どんな転校生がいい?」「そ〜ね〜」
ダウンタウンブギウギバンドの「港のヨーコ・横浜・横須賀」が流行っていた。
「髪の長い女だって」
「名前は、やっぱりヨーコ!」
と、他愛もない話で楽しむ。みんなにも言ってみようよ。と気楽な気分でいた。

親友のMは、成績もいいし体育も出来たし、クラス代表で、先生に信用されていた(と思う)。学級委員の特権で職員室にも出入りしていた。
そこで「Mちゃんが職員室で小耳にはさんだ話だけどさぁ〜、」と切り出した。
「転校生が来るんだって」「横浜の人だって」「髪が長いって」「名前はヨーコだって」「すっごい美人」
最初は、みんな「ウッソ〜〜」と言った。
そうそう、それでよかったのだ。

し・しか〜〜し、なぜか、どうしてか、何がなんだかわからないのだが、「3年1組に転校生が来る」と学校じゅうに伝わってしまった。
休み時間になると、1組の前に三々五々集まっては、窓から中をのぞく。そして「転校生来た?」と聞く。
受験前で、ワイワイやることがなくなっていた時だけに、人が集まるのが楽しくて、「まだよ。来週だって」などと言ってしまった。

そして「Xデー」。
その頃になれば、ほとぼりがさめるんじゃないか、と思ってでっち上げた「Xデー」には、3年生のほとんどが、朝からやって来ては転校生を一目見ようと、押すな押すなの騒ぎになってしまった。
1学年11クラスだから、1クラスを40人としても、400人ということになる。す・ごい。

私達は、休み時間にトイレに出ることも出来ない。
「ど・ど・ど・どーしよ〜〜〜」
先生も、なぜ1組の前に人が集まり出したのか、不思議でいた。が、それが転校生事件とわかり、「1組に転校生は来ない」、「それよりも勉強に集中しなさい」と言ってくれて、デマは、徐々に終息を迎えることになる。

私は、それ以来、自分がついうっかり言った事の影響力の恐さを知った。
デマは、本当に恐い。
そして、私は自分で確認するまでは信用しない性格になってしまった。

昨今の不景気な時代には、世間を騒がすようなデマが広がる可能性はある。
何が真実なのかをちゃんと見ることが必要だよね。
それよりも、もちろん、妙な噂話はしない、ことだな。