31. 内職からバイトへの華麗な転身? (1998.12.14)

内職で得た収入は、一カ月間、昼も夜も働いて、9万円程度だった。
時給計算してみたら400円ちょっとで、当時のバイト代の約半分は、ショックが大きい。
それでも「どうです? 高収入でしょう?」と言われてしまった。一カ月12万円くらいになる人もいる、という。高収入とは、そんなもんだったのか。世の中、甘くない。

私は肩こりからくる頭痛と、運動不足による腰痛と、人と会話することが極端に減ったことによる言語障害(ちょっと大げさ)と、東京暮らしの厳しさなどで、ボロボロだった。

「内職は向かないようだから、これで終わりにしたい」と申し出たら、あっさりと「そうですか」だって。
あれこれ、辞める理由を考えて、引き留められたらどうしよう、と気をもんだが、そんなものか。内職はあっけなく終わった。

また、仕事探しが始まる。
がんばって面接をクリアしなければならない。

あるチラシに「独身寮の掃除をする方募集」とある。時給は800円だ。
住んでいるアパートからは3分くらいの至近距離。さっそく電話してみる。言葉使いも気をつける。
指定された時間に履歴書を持っていくと、
「申し訳ないんですが、先ほど面接した方に決めてしまいました」と言う。
・・・(ショックのあまり口もきけず)。
すると、「掃除は決まったが、食事補助が決まってない」と言う。
募集のチラシにも、食事補助というのがある。
「でも、私、朝が弱いので、朝ご飯は無理です」と述べて辞退しようとする。朝食を作るためには、5時半まで出なければいけないが、ヤワな私には無理だ。

「夕食だけなら、大丈夫かな?」
迷う。食事補助の時給は740円で、それはまぁまぁなのだが、夕食だけでは時間が短い。それで生活をしていけるのだろうか?

だが、私に残された全財産は、ほんのわずかだ。
あとは、親に「私が悪うござんした。そちらに帰りたいと思いますので、なんとか汽車賃を送ってくだされ」とひれ伏す以外に手はない。
それは、バンドデビューの夢を捨てることを意味し、敗北感が頭の中をグルグルとまわる。
すると自分の意識より先に「やらせて下さい」と、小さな声がこぼれた。