4. 故郷という不思議な空間で (1998.11.5)

ちょっと恥ずかしくて、滅多なことでは人前で話さないことがある。
それは、実は、私もフォークを聞いた、ってこと。
音楽なんかやったりすると、「やっぱり私のルーツは、あーすうぃんどあんどふぁいあー、です。」なんて言っちゃったりするもんだから、実は、かぐや姫や、井上揚水や、吉田拓郎や、オフコースや、荒井由美なんか聞いてたなんて、滅多には言わない。
そして特に言わないもののひとつがNSPを聞いていたってことなんだ。
それは、中学生の思い出とともに、ずいぶんと奥にしまってあった。

先日、故郷に帰った。
「あざら屋ホームページ」のBBSに集まる、気仙沼の音楽を愛する人々と飲む。そうしたら気が緩んで、ついつい「私もNSPを聞いていた」ことを暴露してしまった。
そして、うかつにも「つぶつぶのしょっぱい汗は〜〜♪、あせ〜〜は〜(コーラス)」なんて、口から出ちゃった。「ゆ〜〜ぐれど〜〜きは〜〜〜♪」なんて合唱しちゃう。
いかんいかん、と思いつつ、ふみのりさんや、ゆっきさんのペースにはめられ、かっつと「文化祭で同級生が演奏した」ことなどを思い出しては、盛り上がる。

故郷という空間では、そんなことが正直に言えてしまうのだろうか。
一人で本を読むのが大好きだった私の少女時代を、そこの空気がしっかりととらえてくれる。
そんな内気な少女も、やっぱりフォークは大好きだったんだ。
小さな事に大いに悩む、繊細な時代を音楽がささえてくれる。

そういえば、親にねだって買ってもらった、あの大事な大事なラジカセは今はどこにあるだろう。