49. クパチィーノ (1999.1.13)

今年から英会話を習うことにした。
しか〜し、すでに初日にさぼってしまった。いかん。
さぼりの原因は、寝坊。ショォック〜〜〜!
初日からしてこうだから、先が思いやられる。

で、事実上の初日は、生徒が私一人という、ぜいたくな授業になった。

まずは、自己紹介となる。
先生は、日本人の女性で、クパチィーノの高校を卒業したと言うから、私は、おもわず興奮する。
クパチィーノは、サンフランシスコから南に行ったところ、シリコンバレーにある。そこには、アップルの本社があり、昨年、訪ねた。有名なアップルストアは、アップル社の一角にある。私は、ここぞとばかりアップルグッズを買いあさった。

さて、サンフランシスコからアップルストアに行くには、普通、車で行く。日本のアップルファンは、レンタカーを借りる。ところが、私とO夫妻は、国際免許がない。そこで、電車を使う。近くの駅まで行き、そこからタクシーで行く計画だ。

駅前には、タクシー乗り場くらいあるだろうと、勝手に思ってしまった。
ところが、サニーバレーの駅には、タクシー乗り場もないし、タクシーも通らない。途方に暮れていたら、それでも30分くらいすると、偶然1台のタクシーが通りかかり、私達は、必死になって止めた。

行きはヨイヨイ、でタクシーの中は、おおはしゃぎ。
アップルグッズをたくさん買って、さぁ、サンフランシスコに戻ろうとして、気づいた。
どうやって、帰ろうか?
アップル社近くの道はハイウェイで、タクシーを止めることは出来ないことに、やっと気づいた。

そこで、近くの雑貨屋に入り、「タクシーを呼ぶには、どうしたらいいだろうか? 出来れば呼んでくれないか」と無理なお願いをした。
お店のおばちゃんは、タクシーの電話番号を調べてくれ、外にある公衆電話を指さし、「あれを使って」と教えてくれる。所在地の説明文を紙に書いてくれ、「この通りに言えばいい」と、とても親切だ。

何度も礼を述べ、公衆電話にチャレンジするが、タクシー会社に通じない。公衆電話の使い方が違うのか、話し中なのか、それさえも判別できずに途方に暮れた。
次に思いついたのは、アップル社に戻り、アップルストアからタクシーを呼んでもらうことだ。「私達は、MacExpoのために、はるばる日本から来た。それに、ホ〜ラ、こんなに買い物もしている。」と言うことに決め、スタコラサッサと、アップル社に戻る。

すると、正面玄関前にバスが止まっている。
私達が買い物をしたり、記念写真をとる間も、バスがとまっては、観光客らしき人々が降りていたから、ひょっとして、貸切りバスか、それとも路線バスか、質問してみる。
すると、それは、アップル社が用意した社員用のバスで、これからサンフランシスコのExpo会場に向かうのだ、と言う。
「よかったら、乗るかい?」と言われたので、「お願いします」と乗せてもらった。
本当にラッキーだ。なぜなら、その日、Expo会場に行く最終バスだった。
危機一髪でサンフランシスコに戻れる。

美しい風景のハイウェイを走る。電車で見た風景とは別世界だ。電車は、低階層の住居や工場地帯を通る。それは、お世辞にも美しいとは言えない。ハイウェイは、両側が牧場で、牛や馬が広い草原を走ったり寝ころんだりしている。緑が美しい。
バスに乗せてもらって、アップル社の皆さんには、感謝している。

この一部始終をやっとの思いで、英語で先生に話すと、「なんて、無謀なことを」という顔をされた。
本当にそうだ。もっとよく下調べをしなければ、いけなかった。

落合信彦の本に、日本人留学生や観光客の無謀な行動が出ていて、読みながら赤面する。
危機管理がまったく出来ていない。

さて、先生は、パソコンには、それほど興味がないらしく、「そういえば、クパチィーノのあっちこっちに、リンゴのマークがあったなぁ〜」という程度だ。私のエキサイトぶりに驚いたらしい。
「クパチィーノは小さな町」と言う。その小さな町に、アップル社は、大学のキャンバスのようにいくつもの建物が建っている。社員は、会社の中を車で移動する。駐車場も広い。
日本とのスケールの違いを感じる。こういうところで、豊かな発想が生まれるんだな。

今の日本の東京集中も、そうである必要性が薄れつつあるが、21世紀になったら、もっと変わるかもしれないね。