64. 本格派・気仙沼弁---5 (1999.3.8)

これを書いていて、気づいたことがある。
気仙沼弁は、話すけど読むことはないなぁ〜。

子供の頃から、手にする本は標準語で、気仙沼弁で出版されたものはない。
だから、いざ気仙沼弁の文書を読もうとすると、読みにくいのだ。ふ〜〜む。
そういえば、学校への提出物や作文も標準語で書いた。不思議なもんだね、この使いわけって。

英語を勉強した時とは、まったく逆。
英語を見て内容を理解する訓練はやったが、口に出して読むことは、うまく出来なかった。
気仙沼弁は、言えるけど、読めない(いや、読みにくい)。

さて、宿題の「はだでで」だが、この難易度は高い。
これは、「大漁旗」から来ている。
気仙沼は漁港である。
子供の頃、高度成長でわく気仙沼港では、出船には見送りに人々、入船には迎えの人々で、賑わっていた。一度の航海が数カ月〜1年にも及ぶのだから、大変なものだ。

特に、新しい船が初めて遠洋に出る時には、華やかに大漁旗をたてて飾る。
大安吉日には、新しい船に新しい旗がひるがえり、祝いの餅がまかれる。良き時代であった。
(我が家では、この祝儀の餅を拾って昼飯にしたことが何度もある)。

このことから、「はだでで」(旗をたてて)は、あらたまった状態を差す。
「はだでで行がなくてもいっちゃ?」は、「あらたまって行く必要はないでしょ?」という意味だ。
「ちょっと挨拶に行く」のではなく、「あらたまって行く」ことを「はだでで(旗たてて)」と言うのだ。
どうです? いい言葉でしょ?

このような気仙沼独特の言葉がいくつかある。
例えば、「おだづなぁ〜」(ふざけるな〜)というと男言葉。女性が使う時は「おだだないで〜」となる。
東京弁の「(男)ざけんじゃね〜よぉ〜」「(女)ふざけないで〜」の違いと同じだろう。
東京に出てきたばかりの友人が、「おだづな」を標準語で言おうとして「おたつな〜〜」と濁点をとって言ってみたが、通じなかったというのは、有名な話。

さて、気仙沼弁に関する文献が少ないのは、まことに残念である。
これを書くにあたって、紀伊国屋書店や新宿区立図書館に足を運んだが、入手できず。
今度、帰ったら、地元書店で探そう。

学術的なことがわかったら、もっと楽しくなるなぁ。
東京でメジャーなものは、大阪弁と博多弁だ。なんとか、ここに気仙沼弁もくいこませたいもんだ。
がんばれ 気仙沼弁!

つづく...