30. 最初はルンルンと... (1998.12.13)

私の初めての仕事は「内職」だった。
友人に「内職を始めた」と得意げに話す。
「え? 内職なの? バイトじゃないの?」
「そ。」
「続くの〜〜?」
「なにしろ、生活かかっているからね」

日課は、こうだ。
朝、起きると、とりあえずインスタントコーヒーを飲み、おもむろに内職道具を広げ、ワイドショーを見ながら、仕事にいそしむ。

飽きると、楽器の練習をする。楽器の練習に飽きると、また内職に戻る。
お腹がすくと、適当に何かを作り、食べる。
また、内職 → 楽器練習 → 内職 と続く。
夕方になると、散歩をかねながら近くのスーパーに行く。少しブラブラして帰り、また内職、楽器練習と続く。
結構、いいんじゃない? と思ったのは、ほんの3日程度だった。

その後は、おもいっきり飽きた。なぜだか無償に飽きた。
いやいや、これも生活の為なのだ。私は苦労が足りなすぎる。根をあげてはいけない。
唯一の楽しみは、出来た完成品を「1個、2個...」と数え上げる時だ。くら〜〜い。

それは同時に、愕然とする瞬間でもある。完成品の個数に何銭という賃金をかけても、「え〜〜、こんなに少ないの?」
いや、そんなはずはないだろう。高収入とあったもんね。
これは、ひとえにやり方が未熟なのだ。少し、速度を上げる方法を見いださねば。。。

試行錯誤を繰り返し、どうにかノルマをこなし、内職の元締めに持っていく。
「お、早かったですね〜」
「はい(笑顔)」
「じゃ、次は、これぐらいやれるかな?」と前よりも多く部品ももらう。
「あの〜〜、お金は???」
「こちらで、ライトがつくかどうかをチェックして、その分を支払います。だから、次回ね。次に来た時に払いましょう」
「はぁ〜」

元気がなくなってしまった。トボトボと家路につく。
今日は、お金がもらえるかと思ったら、それは次回に先送りだし、やっと終わったと思ったら、その倍ほどもある部品をもらった。気が重い。
この仕事、向いていないかもしれない。

いやいや何事も辛抱が肝心。そんなことでは、プロミュージシャンにはなれない。
と、言い聞かせながら、しかし、足取りは、かなり重い。

つづく...