95. 本格派・気仙沼弁---16 (1999.5.24)

気仙沼には、「あねはん」という呼び方がある。
お姉さんのことではない。相撲部屋の「おかみさん」と同じ意味。
その家の女性の中で、最も地位が上の人を差す。

浅草には「おかみさん会」があるとテレビで見た。気仙沼には残念ながら「あねはん会」はない。気仙沼の商売は浮き沈みが激しく、3代続かないと言われているから、そのせいかもしれない。

うちにお手伝いとして住み込んだことのある「なっちゃん」は、私の祖母のことを、今でも「あねはん」と呼ぶ。
「あねはんの具合は、どんなだべぇ?」(おばあちゃんの具合はどうですか?)と気遣ってくれる。

「あねはん」に「お」をつけ、「おあねはん」と言うと、超・お金持ちの「あねはん」のことを差す。
単に「お」をつけただけではないのだ。ファースト・レディに匹敵し(ホントかい?)プライドもある。

旦那さんのことは「だなはん」と言う。
「だなはん」と「あねはん」は、華やかな商家の時代とともに露と消えた。
商家は会社組織になり、「だなはん」同志が「社長・社長」と呼び合っている。

どうも私の中の「社長」のイメージは、映画「男はつらいよ」で「とらや」の隣に住むタコ社長だ。
「社長さん、税務署から電話です」と女性従業員が呼びにくるし、
「さ、税務署いかなきゃ」という台詞はよく出る。
気仙沼の社長もこれに近いと思うが、そんなことを書いて、抗議のメールが届いてもいけない。
この辺にしておこう。

宿題は、気仙沼での母の呼び方。これは超・レアもの。なぜならば、この言葉は戦前で消えてしまったからだ。私の世代で知っている人は少ないと思うが、いかがかな?

ほんでまだねぇ〜。

つづく...